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がん:乳がん細胞は環境中のピルビン酸に依存して転移ニッチを形成する
Nature 568, 7750 doi: 10.1038/s41586-019-0977-x
細胞外マトリックスは、細胞の挙動を決定する局所的環境、つまりニッチの主要な構成要素である。転移性増殖の際、がん細胞はコラーゲンをヒドロキシ化して転移ニッチの細胞外マトリックスを形成し、自身の転移性増殖を促進する。しかし、コラーゲンをヒドロキシ化するがん細胞の能力を支えているのは特定の栄養素のみである可能性があり、それは、がん細胞でどの酵素反応が活性化するかは、栄養素に影響されるからである。今回我々は、乳がん細胞は栄養素であるピルビン酸に依存して、肺の転移ニッチにおいてコラーゲンを基盤とした細胞外マトリックスの再構築を促すことを示す。具体的には、我々はピルビン酸摂取がα-ケトグルタル酸の産生を誘導することを発見した。このα-ケトグルタル酸は次に、酵素のコラーゲンP4HA(prolyl-4-hydroxylase)の活性を高めることで、コラーゲンのヒドロキシ化を活性化する。ピルビン酸代謝の阻害のみで、コラーゲンのヒドロキシ化を低下させるのに十分であり、その結果、異なるマウスモデルで乳がん由来の肺転移巣の増殖が抑えられた。まとめると、本研究によって、転移ニッチにおけるコラーゲンの再構築と栄養環境の結び付きに関する機構的な知見が得られた。

