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有機化学:チアントレン化による位置選択的かつ汎用的な芳香族C–H官能基化

Nature 567, 7747 doi: 10.1038/s41586-019-0982-0

C–H結合の直接官能基化によって、分子の有用な構造的複雑さや機能的複雑さを迅速に高めることができる。適切な配向基や置換パターンを用いて位置選択性を実現できる場合があるが、そうした適切な官能基が存在しないと、芳香族C–H官能基化反応の大部分では、大半の基質について複数の異性体生成物が生じる。高い位置選択性で進行し、しかもその後の官能基化のために合成の要として機能し得る官能基を導入するC–H官能基化反応の開発によって、明確に定義された多種多様なアレーン誘導体を合成できるようになると思われる。今回我々は、選択性の実現に特定の配向基や置換パターンを必要とせずに、さまざまな変換反応に関与し得る官能基化アレーンを生成することのできる、選択性の高い芳香族C–H官能基化反応を報告する。我々は、持続性の硫黄系ラジカルを導入して高い選択性で複雑なアレーンを官能基化し、チアントレニウム塩を得た。このチアントレニウム塩は、遷移金属触媒反応と光酸化還元触媒反応を通してさまざまな変換に容易に関与することができる。今回の変換反応は、複雑な小分子の多くの誘導体を直接合成して、他の方法では実現不可能な選択性で迅速に官能基多様性をもたらすという点で、これまでの全ての芳香族C–H官能基化反応とは根本的に異なっている。

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