Letter
情報科学:量子技術によって改善された特徴空間を用いる教師あり学習
Nature 567, 7747 doi: 10.1038/s41586-019-0980-2
機械学習と量子コンピューティングという2つの技術にはいずれも、計算の実行方法を変えて、これまで不可能だった問題を取り扱える可能性がある。機械学習のカーネル法はパターン認識に広く用いられており、分類問題ではサポートベクターマシン(SVM)法が最もよく知られている。しかし、特徴空間が大きくなると、そうした分類問題をうまく解決するには限界が生じ、カーネル関数を推定する計算コストが高くなる。量子アルゴリズムによって可能になる計算速度の向上における中核的要素は、指数関数的に大きくなる量子状態空間を、制御可能なエンタングルメントと干渉を通して活用することである。今回我々は、2つの量子アルゴリズムを提案し、それらを超伝導プロセッサー上に実験的に実装したことを報告する。この2つの方法で重要な要素は、量子状態空間を特徴空間として用いることである。量子コンピューター上でのみ効率的に利用可能な、量子技術によって改善された特徴空間を用いることで、量子優位性への可能性のある道がもたらされた。今回のアルゴリズムによって、分類器の構築という教師あり学習の問題が解決できた。2つの方法のうち1つは、量子変分分類器であり、変分量子回路を用いて従来のSVM法と同じようにしてデータを分類する。もう1つの方法は、量子カーネル推定器であり、量子コンピューター上でカーネル関数を推定し、古典的SVM法を最適化する。これらの2つの方法によって、NISQコンピューター(ノイズあり中間スケール量子コンピューター)の機械学習への応用を探るツールが得られる。

