Letter
量子物理学:ローレンツ対称性を検証するための光時計の比較
Nature 567, 7747 doi: 10.1038/s41586-019-0972-2
時空構造に関する基本的な仮定を疑うことで、自然に関する我々の理解は大きく深まった。最先端の原子時計によって、時空の基本的な対称性の精密な検証や、わずか数電子ボルトの低いエネルギーでの標準模型を超える物理学の探究が可能になる。アインシュタインの相対性理論の現代の検証では、これまで検出されなかったローレンツ対称性の破れの測定が試みられており、光時計の周波数の精密比較はそうした検証をさらに改善する有望な手段である。今回我々は、2つの単一イオン光時計が10−18のレベルで一致することを実験的に示し、時計の不確かさバジェットの妥当性を6か月の比較期間にわたって直接確かめたことを報告する。2つの時計のイッテルビウムイオンは、量子化軸が非平行な方向に並んだ別々のイオントラップに閉じ込められている。ローレンツ対称性が破れていると仮定すれば、地球が自転し、太陽の周りを公転する際に、周波数オフセットに周期的な変調が生じると思われる。我々は、そうした変調が10−19のレベルで見られなかったことから、電子に関するローレンツ対称性の破れパラメーターに対して10−21のオーダーの厳しい制限値を導き、これまでの値を2桁改善した。こうしたレベルの精度は、プランクスケールの力学を記述する、将来の量子重力理論の低エネルギーでの検証(残った対称性の破れの規模を予測すると予想される)に不可欠である。

