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生物触媒:鉄触媒によるsp3 C–H官能基化を経る炭素–炭素結合の酵素的アセンブリー

Nature 565, 7737 doi: 10.1038/s41586-018-0808-5

炭素–水素(C–H)結合は、有機分子に多く見られるが、非反応性であり化学的操作には利用できないと通常考えられている。sp3炭素における選択的アルキル化の重要性とそれに伴う課題が強調される一方で、最近のC–H官能基化技術の進歩によってこの論理が変わり始めている。今回我々は、カルベンC–H挿入を経てsp3 C–H結合のエナンチオ選択的・位置選択的・化学選択的分子間アルキル化を起こす鉄系触媒について報告する。この触媒は、天然システイン軸配位子がセリンに置き換えられたシトクロムP450酵素(シトクロムP411)に由来しており、細菌に遺伝的に完全にコードされて産生され、活性と選択性を指向性進化によって調節できる。このタンパク質が鉄(最も豊富な遷移金属)を活性化してこの化学反応を起こすことで、貴金属触媒(C–H官能基化分野で主流となっている)に代わる望ましい代替触媒が得られることになる。実験室で進化させた今回の酵素は、ベンジルC–H結合、アリルC–H結合、α-アミノC–H結合を持つ多様な基質を、高いターンオーバー数と優れた選択性で官能基化した。さらに、この酵素によって数種の天然物の簡潔な合成経路の開発が可能になった。酵素の天然鉄ヘム補因子を用いてsp3 C–Hアルキル化が媒介されたという今回の結果は、多様なヘムタンパク質がこの非生物学的変換の触媒候補となる可能性があることを示唆しており、化学や合成生物学への応用向けに新しい酵素的C–H官能基化反応の開発を促すものになる。

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