氷河学:氷床底からのメタンの継続的流出を駆動するグリーンランドの融解
Nature 565, 7737 doi: 10.1038/s41586-018-0800-0
全球のメタン収支において、氷床は今のところ無視されている。氷床には、氷床が急速に後退する時期に放出されれば大気中のメタン濃度の上昇に寄与する可能性のある大量のメタンが含まれていると提案されているが、現在の氷床のメタンフットプリントに関するデータは存在しない。今回我々は、氷河下で生成されたメタンが、グリーンランド氷床の氷底集水域の効率の良い排水系によって氷縁へ迅速に送られていることを見いだした。我々は、融解期に、氷床底からメタン過飽和水(CH4(aq))が継続的に流出していることを報告する。高濃度のCH4(aq)パルスは、氷河上の事象に強制された氷河下の増水事象と同時に生じている。これは、氷河下がメタン源であることを裏付けており、融解がメタン流出に影響を及ぼすことを浮き彫りにしている。融解期を通した持続的なメタンフラックスは、メタン流出量を超えるメタンが氷河下に蓄えられていることを示しており、6.3トン(流出加重平均で2.4トンから11トンの範囲)のCH4(aq)が氷床底から水平方向へ輸送されていると見積もられる。安定同位体分析によって、メタンの起源は微生物であり、おそらく氷河下に埋まっている無機炭素と太古の有機炭素の混合物から産生されたことが明らかになった。我々は、氷河下の水文が氷床からのメタンフラックスの制御に極めて重要であり、メタンの酸化は、効率の良い排水によって、流出するメタンの約17%に抑えられることを示す。流出水が氷縁に到達すると、大気への逃散がメタンの主なシンクとなり、推定される拡散フラックス(1日当たり4.4〜28 mmol m–2のCH4)は、世界の主要な河川に匹敵する。総合すると今回の結果は、生物学的に活性なメタン生成湿地が氷床下に広がっており、メタンが氷河下の効率の良い排水経路を通って大気へ高速で放出されていることを示している。今回の知見は、これまでこうした環境が正しく評価されておらず、地球のメタン収支において考慮すべきであることを示唆している。

