構造生物学:熱帯熱マラリア原虫のRh5–CyRPA–Ripr侵入複合体の構造
Nature 565, 7737 doi: 10.1038/s41586-018-0779-6
熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)は、ヒトで死亡率の高い重症型マラリアを引き起こす。この原虫の血液期メロゾイトは赤血球に侵入し、これには寄生虫が持つ複数のリガントと宿主が持つ受容体との間の相互作用が必要である。このような相互作用の1つが寄生虫のRh5–CyRPA–Ripr複合体と赤血球が持つ受容体ベイシジン(basigin)との結合であり、これはヒト赤血球への侵入に不可欠な段階である。我々は今回、Rh5–CyRPA–Ripr複合体の赤血球細胞株JK-1への結合は、Rh5単独の場合に比べて格段に強く、また、このような結合はRh5とRiprが高分子量複合体として宿主細胞膜に挿入されることによっていることを示す。Rh5–CyRPA–Ripr複合体のナノメートル以下の分解能でのクライオ(極低温)電子顕微鏡構造から、この侵入に必須の複合体の編成や、複合体の構成要素間の相互作用の様式が明らかになり、CyRPAが複合体組み立てを仲介していることが分かった。今回得られた構造から、CyRPAが持つβプロペラのブレード(羽根)4から6がRh5とRiprに対する接触部位であることが確認された。Rh5–CyRPAとCyRPA–Ripr間の接触範囲が限られていることは、膜への挿入の際に起こるRh5とRiprのCyRPAからの解離と一致する。Rh5–ベイシジンの結晶構造とRh5–CyRPA–Riprのクライオ電子顕微鏡構造を比較すると、Rh5とRiprは赤血球細胞膜への挿入が起こる前は膜と並行な位置にあると考えられる。このことから、この複合体の機能についての情報、従って熱帯熱マラリア原虫の侵入についての手掛かりが得られる。

