がん:がんに見られるFGFR3-TACC3遺伝子融合の代謝機能
Nature 553, 7687 doi: 10.1038/nature25171
発がん性のインフレーム遺伝子融合を生じるような染色体転座は、がんの標的療法の成功を示す重要な例となっている。我々は以前に、ヒト神経膠芽腫の症例の3%にFGFR3-TACC3という遺伝子融合(F3–T3)が見られることを明らかにした。その後の研究によって、F3–T3が他の多くのがんにも同様な頻度で存在することが報告されており、F3–T3はあらゆる種類の腫瘍にわたって広く見られる融合であることが示された。F3–T3融合は強力な発がん遺伝子で、FGFR阻害剤に対する感受性をもたらすが、その下流の発がん性シグナル伝達経路はまだ解明されていない。今回我々は、F3–T3融合を持つヒト腫瘍が、ミトコンドリア機能の活性化を特徴とする転写サブグループに集まっていることを明らかにする。F3–T3は酸化的リン酸化とミトコンドリア生合成を活性化し、酸化的代謝の阻害剤に対する感受性を生じさせる。ミトコンドリア代謝を活性化するシグナル伝達経路の中間段階で、リン酸化ペプチドPIN4のリン酸化が起こる。このF3–T3–PIN4経路が、ペルオキシソームの生合成と新しいタンパク質合成を引き起こす。この同化応答は細胞内の活性酸素種の産生を介してPGC1αコアクチベーターに収斂し、それによりミトコンドリアの呼吸と腫瘍増殖が可能になる。これらのデータから、F3–T3が用いる発がん経路が判明し、F3–T3陽性の腫瘍がミトコンドリア呼吸に依存していることが明らかになり、この経路がF3–T3融合を持つ腫瘍の治療標的になり得ることがはっきりした。また、連鎖的な代謝応答を開始させてがんでのミトコンドリア代謝を促進する遺伝的変化についても手掛かりが得られた。

