Letter

幹細胞:定常状態の上皮代謝回転と器官のサイズのフィードバック調節

Nature 548, 7669 doi: 10.1038/nature23678

上皮性器官では成体期を通して定常状態の代謝回転が起こっており、老化した細胞は幹細胞分裂で生じた子孫細胞により絶えず置換されている。過形成や萎縮を避けるために、器官の代謝回転では細胞の産生と喪失の平衡が厳密に取られていなければならない。しかし、この平衡の機構的基盤は解明されていない。今回我々は、成体ショウジョウバエ(Drosophila)の腸の揺るぎなく正確な代謝回転が、腸細胞のアポトーシスによる幹細胞分裂のフィードバック阻害の解除という共役機構を介して起こることを示す。健康な腸細胞はEカドヘリンを介して幹細胞分裂を抑制しており、Eカドヘリンは上皮増殖因子(EGF)成熟因子rhomboidの転写を抑制することで、分裂促進性のEGFの分泌を阻止する。アポトーシスを起こした個々の腸細胞はEカドヘリンの喪失によって分裂を促進する。Eカドヘリンの喪失によりカドヘリンに結合しているβカテニン(ショウジョウバエではArmadillo)やp120-カテニンが放出されてrhomboidが誘導される。死にゆく腸細胞でのrhomboidの誘導により、その細胞を中心とした特定の範囲内にある幹細胞のEGF受容体(Egfr)の活性化が引き起こされる。アポトーシスを阻止すると、Eカドヘリン制御性のフィードバックは分裂を抑制し、器官は同じ細胞数を保持した。フィードバックを破壊すると、アポトーシスと分裂は共役せず、器官は過形成あるいは萎縮のどちらかを起こした。以上より、ロバストな細胞バランスには、分裂とアポトーシスの共役が必須であることが示された。この共役により、幹細胞の増殖能は、置換細胞が必要とされる正確な時と場所に制限されている。このようにして、局所における細胞間コミュニケーションが、組織レベルの恒常的平衡を生み出し、器官の大きさを一定に保つ。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度