Letter

古気候学:暁新世・始新世境界温暖化極大期における大半が火山由来の炭素の大量放出

Nature 548, 7669 doi: 10.1038/nature23646

暁新世・始新世境界温暖化極大期(PETM)は、約5600万年前に起こった地球温暖化事象であり、主にメタンハイドレートなどの表面堆積物リザーバーの炭素の不安定化によって生じたと一般的に考えられている。しかし、温暖化を引き起こした炭素源が、実際にそうしたリザーバーであったかどうかについては、まだ議論の的になっている。この問題を解決することは、温暖化の近因を解明し、誘因とフィードバックの相対的な役割を定量化するのに重要である。本論文では、海水のpHの代理指標であるホウ素の同位体データを提示し、PETMにおいて海面のpHが一貫して低かったことを示す。我々は、地球システムモデルにおいて、今回のpHデータ、およびそれと対となる炭素同位体記録を組み合わせ、明らかになりつつあるPETMの炭素循環のダイナミクスを再構築した。その結果、以前考えられていたよりもはるかに大きく(1万ペタグラムを超える)、平均すると同位体的により重い炭素源を示す有力な証拠が見いだされた。これによって、表面のリザーバーからの炭素ではなく、北大西洋の巨大火成岩岩石区と関連する火山活動がPETMの主な駆動因であることが明らかになった。この知見は、気候によって生じる有機炭素のフィードバックの増幅は、PETMを駆動するのにおそらく小さな役割しか果たさなかったことを示唆している。しかし我々は、放出された炭素を最終的に隔離し、地球システムの回復を促進するのに、有機物の埋設の増強が重要であったと思われることを見いだしている。

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