神経科学:ヒト臍帯血漿タンパク質が加齢マウスの海馬機能を活性化する
Nature 544, 7651 doi: 10.1038/nature22067
加齢はニューロン機能および認知機能の変化を促進し、こうした機能の低下は多くの神経疾患の主要な特徴となっている。空間とエピソードの記憶と学習を補助する脳領域である海馬は、形態的および分子的レベルで加齢による有害な影響を受けやすい。加齢に伴い、海馬内のさまざまな亜領域のシナプスでは、電気生理学的に学習と記憶に関連する長期増強が損なわれる。分子レベルでは、極初期遺伝子群が、長期増強で誘導され、かつ加齢脳で発現が低下するシナプス可塑性遺伝子に含まれる。若齢血中の因子に曝露すると、他の加齢組織の活性化に加えて、これらの中枢神経系のパラメーターの加齢関連変化が打ち消されるが、特定の認知促進因子の正体や、ヒト臍帯血漿にもこのような活性があるのかはまだ不明である。我々は、発生初期段階の血漿、つまり臍帯血漿はそのような可塑性促進タンパク質の貯蔵所となっているのではないかと考えた。本研究で我々は、加齢マウスでは、ヒトの臍帯血漿の投与により海馬が活性化され認知機能が改善することを示す。ヒト臍帯血漿や若齢マウスの血漿、若齢マウスの海馬に多く含まれる血中因子TIMP2(tissue inhibitor of metalloproteinases 2)を加齢マウスに全身投与すると、投与後に脳で検出され、シナプス可塑性と海馬依存的な認知機能が高まる。加齢マウスでの枯渇実験では、TIMP2は臍帯血漿による認知機能改善に必要であることが明らかになった。我々は全身性のTIMP2プールは若齢マウスでの空間記憶に必要であるが、脳切片をTIMP2抗体で処理すると長期増強が阻害されることを見いだし、このことから、TIMP2が正常な海馬機能においてこれまで知られていなかった役割を持つと考えられる。我々の発見は、加齢や疾患と関連した海馬機能不全を標的としたトランスレーショナル研究に非常に価値のある可塑性を促進するタンパク質が、ヒト臍帯血漿に含まれていることを示している。

