Letter

遺伝学:近親婚が高率で行われるコホートにおけるヒトのノックアウト個体と表現型解析

Nature 544, 7649 doi: 10.1038/nature22034

生物医学の重要な目標の1つは、ヒトゲノムの全ての遺伝子の機能を理解することである。機能喪失変異によりヒトの1つの遺伝子の両方のコピーが破壊されることがあり、そのような「ヒトのノックアウト個体」の表現型解析により、遺伝子機能についての手掛かりを得ることができる。近親婚は機能喪失変異をホモ接合で持つ子が生じる可能性を高める。パキスタンでは、近親婚の割合が顕著に高い。今回我々は、南アジア人の循環代謝疾患の決定要因の理解を目的としたPROMIS(パキスタン心筋梗塞リスク研究)に参加した1万503人の成人について、タンパク質コード領域の塩基配列解読を行った。機能喪失と予測される(pLoF)変異をホモ接合で持つ個体を明らかにし、200以上の生化学的形質や疾患形質についての表現型解析を行った。その結果、4万9138個の希少な(マイナー対立遺伝子頻度が1%未満の)pLoF変異が見いだされた。これらのpLoF変異は、1317個の遺伝子をノックアウトしており、各遺伝子は少なくとも1人の参加者でノックアウトされていると推定された。pLoF変異がホモ接合であることは、PLA2G7では可溶性のリポタンパク質関連ホスホリパーゼA2の酵素活性の欠損、CYP2F1では血漿インターロイキン8濃度の上昇、TREHではアポB含有リポタンパク質亜分画の濃度の低下、A3GALT2あるいはNRG4のどちらかでは血漿インスリンCペプチドの濃度の顕著な低下、SLC9A3R1ではカルシウムおよびリン酸のシグナル伝達のメディエーターに関連していた。APOC3のヘテロ接合性欠損は冠動脈性心疾患に保護的に働くことが示されており、我々のコホートでAPOC3のpLoFのホモ接合での保因者が突き止められた。我々は、APOC3のヒトノックアウト個体を募集し、経口脂質負荷試験を行った。APOC3がノックアウトされている個体は、そのような変異を持たない血縁者と比較した場合、通常食後に起こる血漿トリグリセリドの上昇が顕著に抑えられていることが分かった。以上のことから、これらの観察は、ヒトにおける遺伝子の完全な破壊によって生じる表現型の影響を理解するための系統的な取り組みである「ヒトノックアウトプロジェクト」のためのロードマップを示している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度