構造生物学:アディポネクチン受容体への構造的考察から示唆されたセラミダーゼ活性
Nature 544, 7648 doi: 10.1038/nature21714
アディポネクチン受容体(ADIPOR)は内在性膜タンパク質で、グルコースおよび脂質の代謝を制御しており、制御の少なくとも一部は、細胞で見られるセラミダーゼ活性、すなわちセラミドの加水分解を触媒してスフィンゴシンと遊離脂肪酸(FFA)を生成する活性を仲介することによっている。受容体の2つのサブタイプであるADIPOR1とADIPOR2の結晶構造から、これらが全般的に類似した7回膜貫通ドメインから構築され、7回膜貫通ドメイン中には何も結合していない大きなキャビティと亜鉛結合部位があることが明らかにされている。しかし、ADIPORが機能する際の分子機構は分かっていない。今回我々は、FFA分子に結合しているADIPOR2の結晶構造を報告し、ADIPOR2が基礎的セラミダーゼ活性を本来的に備えていて、それがアディポネクチンにより増強されることを示す。我々はまた、セラミドを結合した構造も明らかにし、計算論的手法を用いてADIPOR2の加水分解活性の機構として可能なものを考案した。分子動力学シミュレーションでは、亜鉛に配位している残基の側鎖が速やかに組み換えられて、亜鉛に結合している水酸化物イオンがセラミドのアミドカルボニルを速やかに求核攻撃するようになることが示された。また、公表されているADIPOR1の結晶構造を修正し、ADIPOR2とは明らかに異なる7回膜貫通ドメイン構造を持つ結晶構造を示す。この構造中ではFFAは観察されず、亜鉛触媒部位と思われる部分とセラミド結合ポケットとが膜二重層の内側の単層に向いて露出している。ADIPOR1も本来的にセラミダーゼ活性を持つので、2つの異なる構造はADIPORの酵素活性における重要な段階をそれぞれ示していると考えられる。しかし、見られるセラミダーゼ活性は低く、ADIPORの酵素反応のパラメーターや基質特異性の特徴を完全に解明するにはさらなる研究が必要だろう。ADIPOR機能へのこのような考察からは、これらの臨床上重要な酵素の強力な調節因子を構造に基づいて設計することが可能となると予想される。

