Letter

生物地球化学:古原生代のステロール生合成と酸素の増加

Nature 543, 7645 doi: 10.1038/nature21412

地質記録に保存されている天然物は「分子化石」の役割を果たすことがあり、遠い過去に存在した生物および生理機能に関する手掛かりをもたらす。こうした分子化石群のうち重要なものの1つに、ステロール脂質が続成作用を受けて生じたステロイド炭化水素(ステラン)がある。修飾側鎖を持つ複雑なステロール類は真核生物に特有だが、より単純なステロール類を合成する細菌もわずかに存在する。ステロール生合成は酸素を大量に必要とする過程であるため、古代の岩石に複雑なステランが存在することは、真核生物のみならず好気的な代謝過程の存在も示すことになる。1999年、オーストラリア・ピルバラクラトンに由来する27億年前の岩石中にステランが発見されたことが報告され、光合成による酸素の生産と24億5000万~23億2000万年前の大気中での酸素の蓄積(「大酸化事変」としても知られる)との間の長い時間的ずれが示唆された。しかし、最近行われた再評価でこれらのステランがこの時代の岩石以外に由来する汚染物質として棄却されたことにより、報告されている最古のステランは約16億4000万年前まで年代が押し戻されてしまった。今回我々は、分子時計法を用いて、ステロール生合成の進化に対する制約を改善した。ステム群真核生物は、機能的には現代のものと同じステロール生合成遺伝子を、遺伝子水平伝播によって細菌と共有したと推測される。複数の分子時計解析の比較から、細菌と真核生物のステロール生合成遺伝子の分岐年代の周辺確率が最大となるのは約23億1000万年前であることが明らかになり、これは大酸化事変に関する最新の地球化学的証拠が示す年代と一致する。従って今回の結果は、単純なステロール生合成が現生真核生物の多様化のはるか以前に存在したことを示しており、これは発見されている最古のステランのバイオマーカー年代(約16億4000万年前)を大幅にさかのぼるとともに、ステロール生合成の進化史と海洋–大気系での分子状酸素の利用可能性の最初の拡大とを結び付けるものである。

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