がんエピジェネティクス:ENLは急性骨髄性白血病におけるヒストンのアセチル化と発がん遺伝子の発現を結び付ける
Nature 543, 7644 doi: 10.1038/nature21687
がん細胞は、全体的なエピジェネティック異常を特徴とし、クロマチン装置を利用して発がん遺伝子発現プログラムを活性化していることが多い。これらの過程の基礎となる重要な機構は、「読み取り」タンパク質による修飾されたヒストンの認識である。従って、そのような経路を標的とすることは、BET(bromodomain and extra-terminal)阻害剤の開発が例となるように、臨床的に有望である。我々は最近、YEATSドメインがアセチル化リシン結合モジュールであることを明らかにしたが、ヒトがんにおけるその機能的な重要性は解明されていない。今回我々は、YEATSドメイン含有タンパク質ENLが、急性骨髄性白血病の疾患維持に必要であり、ENLのパラログであるAF9は必要ではないことを示す。CRISPR–Cas9によりENLを除去すると、in vitroおよびin vivoにおいて、骨髄系の最終分化の増強や白血病性増殖の抑制を含む、抗白血病効果が生じた。生化学的研究や結晶構造研究、ChIP–seq(chromatin-immunoprecipitation followed by sequencing)解析から、ENLはアセチル化されたヒストンH3に結合し、また、白血病に不可欠な、活発に転写される遺伝子のプロモーター上のH3K27acおよびH3K9acと共局在することが明らかになった。構造に基づいて変異を導入し、YEATSドメインとヒストンアセチル化の間の相互作用を破壊すると、ENL標的遺伝子へのRNAポリメラーゼIIの動員が減少して、発がん遺伝子発現プログラムが抑制された。さらにENL機能の破壊により、白血病細胞がBET阻害剤感受性になったことは重要である。総合的に我々のデータは、ENLが急性骨髄性白血病において発がん転写プログラムを調節するアセチル化ヒストンの読み取り因子であることを明らかにし、また、クロマチンからのENLの除去が、それ単独で、あるいはBET阻害剤との併用により、悪性度の高い白血病に対するエピジェネティクスに基づく有望な治療法となり得ることを示唆している。

