地球科学:地球の最初の安定した大陸は沈み込みによって形成されたのではない
Nature 543, 7644 doi: 10.1038/nature21383
地球の最初の大陸が形成され安定化した際の地球ダイナミクス的環境についてはいまだに議論が続いている。始生代(40億~25億年前)までさかのぼることができる露出した大陸地殻の大半は、マグネシウムの少ない含水玄武岩の部分溶融で形成されたトーナル岩–トロニエム岩–花崗閃緑岩(TTG)からなっている。特に、こうしたTTGには、「島弧に似た」微量元素の特徴があるため、現在の沈み込み帯の環境で生成される大陸地殻と似ている。西オーストラリアの東ピルバラ・テレーンでは、ピルバラ超層群の底にあるクーカル累層のマグネシウムの少ない玄武岩の微量元素組成は、TTGの原岩であることと一致する。このような玄武岩は、始生代のマントル温度が現在よりもはるかに高温であったなら存在したと予想されている、厚い(厚さ35 km以上)古代(35億年以上前)の玄武岩地殻の残滓である可能性がある。本論文では、クーカル玄武岩の相平衡モデルを用いて、TTGの「母岩」としてのクーカル玄武岩の適合性を確認するとともに、TTGは、高い地温勾配(ギガパスカル当たり700°C以上)に沿ってクーカル玄武岩が約20~30%融解して生成されたことを示す。我々は、クーカル玄武岩の微量元素組成も分析し、こうした岩石自体が、マグネシウムの多い初期世代の玄武岩に由来し、始生代のTTGの島弧に似た特徴は、祖先系統の供給源から受け継がれたものであると提案する。最初の大陸を生成し安定化させたこの長期にわたる多段階過程は、高い地温勾配と併せて、現代のプレートテクトニクスの様式とは一致せず、その代わりに、厚い台地状の玄武岩地殻の底近くでTTGが形成されたことを裏付けている。従って、前期始生代のTTGの生成には、沈み込みは必要ではなかった。

