材料科学:設計された触媒を用いて成長させた、カイラリティ制御された水平カーボンナノチューブ・アレイ
Nature 543, 7644 doi: 10.1038/nature21051
半導体業界では、マイクロプロセッサーチップ当たりのトランジスター数が2年ごとに2倍になると予測する「ムーアの法則」が終わりに近づいていると、ますます考えられるようになっている。このため、ナノエレクトロニクスデバイス用として、単層カーボンナノチューブ(SWNT)などの代替半導体材料の探求が続いている。水平ナノチューブアレイは、電流出力を最適化するため、工学的応用には特に魅力的である。カイラリティを制御して水平SWNTアレイを直接成長させれば、より広範な応用にアレイを適合させることができるようになり、作製したデバイスの均一性も保証されると考えられるが、そうした水平SWNTアレイの成長はまだ実現されていない。今回我々は、固体炭化物触媒の活性表面の対称性を制御することによって、その触媒表面から、予測されたカイラリティを持つ水平SWNTアレイを成長させることができることを示す。我々は、平均密度が20本/μmを超え、チューブの90%が(12, 6)のカイラル指数を持つ水平配向金属SWNTアレイと、平均密度が10本/μmを超え、チューブの80%が(8, 4)のカイラル指数を持つ半導体SWNTアレイを得た。ナノチューブは、均一なサイズのMo2C固体触媒とWC固体触媒を用いて成長させた。熱力学的観点から、SWNTの構造対称性と直径を触媒のそれと整合させることによって、SWNTを選択的に核形成させた。また、我々がカイラル指数(2m, m)(mは正の整数)のナノチューブを成長させた際、炭素濃度を高くして化学気相成長過程における速度論的成長速度を最大にすることによって、収率を増大させることができた。クローニングやシーディング、特異的に構造を整合させた成長などの過去に報告された方法と比較すると、熱力学的制御と速度論的制御を行う今回の戦略は、自由度をさらに高めることができ、アレイ中の成長直後のSWNTのカイラリティを調節できる。また、所望のカイラリティの実現に必要な成長条件の予測に用いることもできる。

