Letter

植物科学:節での輸送体欠損によりイネの穀粒中のリン蓄積量を減少させる

Nature 541, 7635 doi: 10.1038/nature20610

リンは作物の生産性に重要な栄養素である。イネ科穀物の総リン量の60%以上は、最終的には穀粒へ配分されるため、収穫時に圃場から収奪される。こうして収奪されるリンの量は、圃場に毎年投入されるリン肥料の85%に相当する。穀物中のリンは主にフィチン酸塩の形で存在するが、ヒトや非反芻動物(家禽類やブタ、魚類など)はこれを消化できないため、排出されたリンが水系の富栄養化を引き起こしている。そのため、穀粒中に蓄積されるリンを減少させることは、持続可能で環境にやさしい農業につながると考えられる。本論文では、イネで穀粒へのリンの配分を制御する輸送体、SPDT(SULTR-like phosphorus distribution transporter)について報告する。SPDTは、節の肥大維管束および分散維管束の両方で木部領域に発現し、細胞膜局在型のリン酸輸送体をコードする。アジアイネ(Oryza sativa)でこの遺伝子をノックアウトすると、リンの分配が変化して、穀粒中のリンが減少したのに対し葉中のリンレベルは上昇した。ノックアウト系統では、玄米中のリンおよびフィチン酸塩の総量が20~30%減少していたが、収量や種子発芽、実生活力への影響は認められなかった。以上の結果は、SPDTがイネの節において、リンを穀粒へ優先的に配分するスイッチとして機能することを示している。この知見は、圃場からのリンの収奪を減少させるとともに、水系の富栄養化リスクを低減させるための有望な戦略を提供するものである。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度