細胞生物学:ストレス応答性転写産物の迅速な搬出のためにmRNAの品質管理が回避される
Nature 540, 7634 doi: 10.1038/nature20572
細胞がよく増殖できる生理的条件の範囲は狭い。極端な条件での生存には、ストレス状況の打開を助けるシャペロンの速やかな発現が必要である。これらの熱ショックタンパク質の優先的な合成を確保するために、細胞は熱ショックタンパク質以外の転写産物の転写、mRNA前駆体のプロセシング、核外輸送を抑制する一方、ストレス特異的なmRNAのみを搬出および翻訳する。細胞が通常の転写産物を選択的に保持しながら、熱ショックmRNAの迅速な搬出を達成する仕組みはほとんど解明されていない。出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)では、シャトリングRNAアダプタータンパク質のNpl3、Gbp2、Hrb1、Nab2が、伸長中のmRNA前駆体に転写と同時に積み込まれる。それらは、核外輸送のために、搬出受容体であるヘテロ二量体Mex67–Mtr2(ヒトではTAP–p15)を動員する。今回我々は、細胞ストレスが通常のmRNAからMex67とそのアダプタータンパク質群の解離を誘導し、一般的なmRNA搬出を阻止することを示す。同時に、熱ショックmRNAはMex67との結合によって、アダプタータンパク質群を必要とせずに、迅速に搬出される。熱ショックmRNAに転写と同時に迅速にMex67が積み込まれることには、ストレス応答性遺伝子の熱ショックプロモーターエレメントに結合する熱ショック転写因子Hsf1が関与している。この搬出様式間の重要な差異は、アダプタータンパク質が結合したmRNAは品質管理を受けるが、ストレス特異的な転写産物は品質管理を受けないことである。実際、通常のmRNAが熱ショックプロモーターの制御下で発現すると、品質管理を受けていないストレス応答性転写産物になることから、そこでmRNAが品質管理を受けるかどうかがコードされていると考えられる。Mex67アダプタータンパク質は、正常な条件ではRNAの監視のために動員され、品質管理が行われたmRNAのみがMex67と結合して核から出ることができる。従って、熱ショックmRNAは、誤りのないmRNA形成を犠牲にして、速やかに搬出・翻訳されることで、過酷な状況での細胞の生存を可能にしている。

