生物医学:ミトコンドリアDNAに病原性変異を持つヒト卵母細胞でのミトコンドリア置換
Nature 540, 7632 doi: 10.1038/nature20592
母親から受け継ぐミトコンドリア(mt)DNAの変異は、小児で致死的あるいは重篤な消耗性症候群を引き起こすことがあり、疾患の重症度は、特定の遺伝子変異、および各細胞や組織における野生型mtDNAに対する変異型mtDNAの割合(ヘテロプラスミー)によって変わる。mtDNAの病原性変異は比較的よく見られ、そのような変異を持つ子が米国では毎年およそ778人生まれていると推定されている。母から子へのmtDNA疾患の伝達を回避するミトコンドリア置換療法あるいは技術(MRT)では卵母細胞に含まれる母系mtDNAを置換する。今回我々は、一般的なmtDNA症候群を持ついくつかの家系で行ったMRTの結果を報告する。母親の卵母細胞の質は正常で、その変異レベルは生存している子の変異レベルと相関していた。紡錘体移植により卵母細胞の変異型mtDNAの効率的な置換が行われ、ドナーmtDNAを99%以上含む胚が得られた。ほとんどの胚に由来する胚性幹細胞(ES細胞)ではドナーmtDNAは安定して維持されていた。しかし、一部のES細胞株ではドナーmtDNAが徐々に失われ、母系ハプロタイプに戻った。ドナーmtDNAの母系mtDNAとの相互作用を評価すると、適合性は、ミスマッチあるいは酸化的リン酸化の機能不全よりもmtDNAの複製効率に関係しているようである。特定のmtDNAハプロタイプが優先的に複製される妥当性の高い原因として、我々はDループのconserved sequence box II領域内の1つの多型を突き止めた。さらに、いくつかのハプロタイプは、細胞の増殖や成長に有利に働く。従って我々は、MRTには適合するドナーmtDNAを選択するためのマッチングの理論的枠組みを提案する。

