Letter
気候科学:更新世においてグリーンランドには長期間ほとんど氷がなかった
Nature 540, 7632 doi: 10.1038/nature20146
グリーンランド氷床(GIS)には、7.4 mの全球海水準上昇に相当する氷がある。そのため、現在生じている気候温暖化における氷床の安定性は、差し迫った問題である。しかし、太古のGISの安定性に関する代理指標の証拠が乏しいため、その歴史は論争の的となっている。本論文では、GISの頂上付近の氷床コアの下から得られた岩盤コアにおける、宇宙線が生成したベリリウム同位体(10Be)とアルミニウム同位体(26AI)の新たな測定結果に基づいて、グリーンランドは更新世(260万~1万1700年前)において長期間退氷していたことを示す。複数のモデルから、この岩盤の場所に氷がなかった時期には、わずかに残った氷がグリーンランド高地の東部に集まっており、GISの体積は現在の10%未満に減少していたことが示唆された。今回の結果から、GISの歴史の可能性の範囲が絞り込まれる。すなわち、現在の氷床の前に氷がなかった状況が28万年以上続いていたと仮定すると、測定結果と一致するような氷床の安定性が保たれる最長の期間は110万年である。更新世の間氷期のいずれか、あるいは全ての期間に、グリーンランドに氷が存在しなかったとする他のシナリオは、より現実的である可能性がある。今回の観測結果は、更新世においてGISが継続的に存在することを示す既存のモデルシミュレーションの大半とは相いれない。将来のGISのシミュレーションでは、更新世の気候強制の下でグリーンランドには長期間ほとんど氷がなかったことを考慮すべきである。

