がん幹細胞:幹細胞微小環境におけるPtpn11活性化変異の白血病誘発効果
Nature 539, 7628 doi: 10.1038/nature20131
RASシグナル伝達経路の正の調節因子であるプロテインチロシンホスファターゼSHP2(PTPN11にコードされる)の生殖細胞系列の活性化変異は、ヌーナン症候群の患者の50%に見られる。このような患者では白血病を発症するリスクが上昇しており、特に小児性の骨髄増殖性腫瘍(MPN)である若年性骨髄単球性白血病(JMML)が多く見られる。これまでの研究から、Ptpn11の変異がShp2の触媒活性依存的な細胞自律的機構を介してJMML様MPNを引き起こすことが示されている。しかし、これらの変異の骨髄微小環境における効果は解明されていない。今回我々は、マウス骨髄微小環境でのPtpn11の活性化変異が、造血幹細胞(HSC)に非常に有害な影響を及ぼすことにより、MPNの発生とプログレッションを促進することを報告する。間葉系幹/前駆細胞や骨前駆細胞におけるPtpn11の変異は、CCケモカインのCCL3(別名MIP-1α;HSCの存在する領域に単球を動員する)の過剰な産生を引き起こすが、分化した骨芽細胞あるいは内皮細胞におけるPtpn11の変異にはそのような効果はなかった。その結果、単球が産生するインターロイキン1βやおそらく他の炎症促進性サイトカインによりHSCが過剰に活性化され、MPNの増悪および幹細胞移植後のドナー細胞由来のMPNが引き起こされる。特に、CCL3受容体アンタゴニストの投与により、Ptpn11に変異がある骨髄微小環境誘導性のMPNの発生が効果的に抑制されたことは重要である。この研究は、骨髄微小環境のPtpn11変異が白血病誘発に及ぼす重要な影響を明らかにし、また、ヌーナン症候群の白血病のプログレッションを制御し、ヌーナン症候群に伴う白血病における幹細胞移植療法を改善する上で、CCL3が治療標的となる可能性を示している。

