神経障害:霊長類での脊髄損傷後の歩行障害を軽減する脳・脊髄インターフェース
Nature 539, 7628 doi: 10.1038/nature20118
脊髄損傷は、運動を調整する脊髄回路と脳の間の連絡を途絶させる。脳・コンピューターインターフェースは、こうした損傷を迂回するために皮質活動と筋肉の電気刺激とを直結させ、それによって麻痺の起こった手の把握能力を回復させた。理論的には、この方法で脚の歩行用筋肉活動の支配を回復させることも可能と考えられる。しかし、自然で適応的な移動運動の基盤となっている個々の筋肉の活性化パターンの複雑な連鎖を再現することは、概念的にも技術的にも大変な難問である。最近、移動運動を引き起こす協力筋群の自然な作動が、腰髄の硬膜外電気刺激で再現できることがラットで示された。今回我々は、脚の運動につながる皮質活動を硬膜外電気刺激プロトコルと連結することで脳・脊髄インターフェースを構築し、これが非ヒト霊長類での脊髄損傷後の歩行障害を軽減させたことを報告する。アカゲザル(Macaca mulatta)で、運動皮質足領野に皮質内微小電極アレイを埋め込み、さらに空間選択的な硬膜外インプラントとリアルタイムでのトリガー能を持つパルス発生器からなる脊髄刺激装置を腰髄に埋め込んだ。また、伸展および屈曲の運動状態の神経デコーディングとそうした運動を促進する刺激プロトコルとをオンラインで結ぶワイヤレス制御システムを設計して実装した。このシステムを使うことで、サルは制限なしに、つまり体につながれた電子機器によって拘束されることなく、完全に自由に行動することができた。正常な、無傷状態のサルで脳・脊髄インターフェースを実証してから、胸髄レベルの片側皮質脊髄路を損傷させたところ、損傷のわずか6日後に、事前訓練なしで、麻痺した後肢のトレッドミル上および地上での負荷歩行運動がこの脳・脊髄インターフェースによって回復した。このインターフェースに組み込まれた埋め込み型の構成要素は全て、ヒトでの同様の研究で試験用として承認されているものであるため、今回の実験は脊髄損傷患者での概念実証研究に向けた実際的なトランスレーショナル研究へ向かう経路を示している。

