光物理学:フェムト秒の軌道画像化による単一分子の超高速運動の追跡
Nature 539, 7628 doi: 10.1038/nature19816
単一分子の動きをその分子に固有の時間スケールで観察することは、現代のナノ科学の中心となる目標の1つであり、それには、超高速時間分解能と原子スケールの空間分解能を組み合わせた測定が必要となる。走査トンネル顕微鏡を使った個々の分子軌道の直接画像化や、サブ分子分解能でのチップ増強ラマンスペクトルや発光スペクトルの取得に例示されるように、定常状態の実験では必要な空間スケールが実現されている。しかし、この時間領域で単一分子の固有のダイナミクスを直接追跡しようとすると、分子との相互作用をフェムト秒の時間窓に閉じ込めなければならないという困難な課題に直面する。個々のナノ粒子では、走査トンネル顕微鏡と、調整した光パルスの振動する搬送波を使って光の単一周期よりも十分短い時間スケールで電子運動を直接操作する、いわゆる光波エレクトロニクスを組み合わせて、こうした超高速の時間閉じ込めが実証されている。今回我々は、状態選択的なトンネリング領域を実現する超高速テラヘルツ走査トンネル顕微鏡を構築した。この領域では、テラヘルツ電場波形のピークによって、単一分子状態を通して禁制のトンネリングチャネルが一時的に開かれる。これによって、テラヘルツ波の1振動周期よりも短い時間窓内で、個々のペンタセン分子の最高被占分子軌道から電子が1つ除去される。我々は、この効果を利用して、サブオングストロームの空間分解能で軌道構造の約100フェムト秒スナップショット画像を記録し、ポンプ・プローブ測定を通して、テラヘルツ周波数のコヒーレントな分子振動をこの時間領域で直接明らかにした。光波エレクトロニクスと今回の原子分解能法の組み合わせによって、超高速の光化学現象を可視化し、単一軌道スケールで分子エレクトロニクスを操作する扉が開かれると、我々は予想する。

