化学:プロトン共役電子移動によって可能になる遠隔C–H結合の触媒的アルキル化
Nature 539, 7628 doi: 10.1038/nature19811
水素原子移動(HAT)触媒反応の進歩にもかかわらず、N-アルキルアミドの強い窒素–水素(N–H)結合のホモリシスを可能にするHAT分子触媒は今のところ存在しない。アミドホモリシスのプロトコル開発が行われるようになった動機は、得られるアミジルラジカルの有用性に由来しており、このアミジルラジカルは、オレフィンアミノ化や、配向基を用いる炭素–水素(C–H)結合官能基化など、合成上有用なさまざまな変換反応に関与している。C–H結合官能基化は、古典的なHofmann–Löffler–Freytag反応の一種であり、この反応過程では、アミジルラジカルによって、活性化されていない脂肪族C–H結合から水素原子が引き抜かれる。この変換反応は強力であるが、効率よくアミジルを生成するには、通常アミド出発物質の酸化的N-事前官能基化が必要である。さらに、こうしたN-活性化基は最終生成物に組み込まれることが多いので、この方法は一般的に炭素–炭素(C–C)結合の直接構築には適さない。今回我々は、この欠点を、プロトン共役電子移動を介するN-アルキルアミドのN–H結合のホモリシスによって克服する手法について報告する。このプロトコルでは、励起状態のイリジウム光触媒と弱いリン酸塩基が協調的に働き、協奏的な素過程においてアミド基質からプロトンと電子の両方を除去する。得られたアミジルラジカル中間体は、次のC–H引き抜きとラジカルアルキル化過程を促進することが明らかになった。このC–Hアルキル化は、単純な非官能基化アミドを用いて新たなC–C結合形成に導く、Hofmann–Löffler–Freytag反応の触媒版である。アミドが医薬品や天然物に広く含まれていることを考えると、この方法によって目的のアミン含有物質の合成や構造構築が単純化できると予想される。さらに、今回の研究は、従来のHATに基づく手法ではエネルギー的に難しい一般的な有機官能基のホモリティック活性化が、協奏的プロトン共役電子移動によって可能になり得ることを実証するものである。

