Letter

気候科学:熱帯低気圧の活動の変化によって減少した巨大三角州への河川堆積物の供給

Nature 539, 7628 doi: 10.1038/nature19809

世界の河川は、毎年190億トンの堆積物を沿岸域へ運び、そのうちかなりの割合が、5億人を超える人々が住む大きな三角州に堆積されている。大きな三角州の大半(70%以上)が、海水準上昇、地盤沈下、人工的な堆積物の捕獲の組み合わせによって危機に瀕しており、三角州が相対的海水準上昇による「水没」から免れるには、河川堆積物の供給を維持することが重要である。本論文では、メコン川で得られた浮遊土砂量データと水文モデルシミュレーションを組み合わせて、世界有数の巨大三角州の1つへの浮遊土砂の輸送に熱帯低気圧が果たす役割を特定する。メコン川の浮遊土砂量の空間変動は、熱帯低気圧の気候学的変動の観測結果と相関があり(r = 0.765、P < 0.1)、三角州まで到達する浮遊土砂量のかなりの割合(32%)が、熱帯低気圧に伴う降雨で生じた流出によって運ばれていることが実証された。さらに、三角州に運ばれる浮遊土砂量は、近年(1981~2005年)において52.6 ± 10.2メガトン減少しており、そのうち33.0 ± 7.1メガトンが熱帯低気圧の気候学的変動に起因すると見積もられた。従って、浮遊土砂の沿岸への輸送の規模と変動の制御に、熱帯低気圧が重要な役割を果たしていることが明らかになった。上流の貯水池における堆積物の人工的な捕獲は、世界の主要な三角州に到達する浮遊土砂量の過去の減少を説明し、将来の減少を予想する上で、主要な要因になる可能性がある。しかし今回の研究は、熱帯低気圧の気候学的変動が、河川の浮遊土砂量の変化傾向に影響を及ぼし、そのため脆弱な沿岸系のリスクを十分に評価する上でも重要であることを示している。

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