古生物学:中生代の鳥類発声器の化石証拠
Nature 538, 7626 doi: 10.1038/nature19852
複雑なさえずりから単純な地鳴きまで、鳥類は鳴管と呼ばれる独特な発声器を用いて音を発する。鳴管は心臓に近い気管–気管支分岐部に位置し、音は骨環の間に存在する発声ひだが振動することで発せられる。鳴管の構成要素は化石記録に表れないことが一般的と考えられており、化石化した鳴管要素の数少ない報告例は全て、更新世から完新世(約250万年前~現在)と地質学的に新しい。それ以前のものとして知られている唯一の鳴管は始新世の標本であるが、これについての記載や説明は存在せず、軟組織の構造と鳴管の三次元的形状との関係についてのデータも非常に限られている。本論文では、我々の知るかぎりで初めて、中生代の鳴管化石について報告する。この化石は、南極で出土した後期白亜紀(約6900~6600万年前)の標本から、三次元構造を保存した状態で見つかった。今回の新しいVegavis iaaiの標本は、頭蓋骨および体骨格が共に残されており、現生鳥類(鳥綱)の放散の一部から得られたものとして最も完全性が高い。現生非スズメ目鳥類12種の鳴管構造の造影X線コンピューター断層撮影(CT)画像と共に、Vegavisおよび始新世の鳴管標本のCT画像化法から、鳥類の祖先状態の復元のための情報、そして絶滅種の発声器官の特性についての情報が得られた。Vegavisの骨環は融合して、骨化の進んだカンヌキ骨を形成している。これは新顎類鳥類の派生的な特徴であり、大型化した発声ひだ/唇を固定すると考えられている。Vegavisの気管支に見られる左右不相称性は、発声ひだの声源を2セット有する現生鳥類のみで知られている。今回のデータは、鳥類の発声器官が化石化する可能性を示しており、他の恐竜ではなぜそれらの化石が発見されていないのかという問題を提起する。中生代の気管・気管支化石が他に見つかっておらず、鳴管を持たない主竜類ではこの部位が骨化しにくいことから、複雑な鳴管という特徴は、鳥類進化において飛翔や呼吸システムの新機軸のはるか後という遅い時期に現れた可能性がある。

