がん:T細胞急性白血病では骨髄微小環境との間に動的な相互作用が見られる
Nature 538, 7626 doi: 10.1038/nature19801
がん細胞とそれを取り巻く微小環境との間の複雑な相互作用が、疾患の発症、化学療法耐性や再発に関与することは広く認められている。観察されているこうした相互依存性を考慮して、特定のがんストローマ細胞系列とそれらの相互作用を標的とした新しい治療介入法が探索されている。今回我々は、ヒトT細胞急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)のマウスモデルを使い、骨髄内での疾患進行について、骨髄内播種から化学療法耐性の発生/選択までを組織全体にわたって、また単一細胞レベルで時間経過に沿って観察した。骨髄内全体にわたって遊走した白血病細胞は、非常に動的な細胞間相互作用と無差別的な分布を示し、骨髄内サブ区画との選択的結合は全く見られなかった。予想外だが、こうした挙動は最初期の骨髄内播種から化学療法に対する応答と耐性発生まで、疾患進行の過程を通じてずっと維持されていた。我々の結果は、T-ALL細胞は疾患の広がりあるいは化学療法耐性クローン選択について特異的な骨髄微小環境には依存していないことを明らかにしていて、こうした過程の基盤には確率論的機構が働いていると考えられる。T-ALLの浸潤とプログレッションはストローマとは無関係だが、疾患がもたらす負荷の蓄積はなお、骨内空間の迅速かつ選択的なリモデリングを引き起こし、血管周囲細胞は維持されるものの、成熟骨芽細胞が完全に失われる結果となる。こうした転帰は、内在性骨髄ストローマのバランスを、造血幹細胞機能の効率低下と関連する組成へと移行させる。T-ALLと骨髄微小環境とのin vivoでの相互作用についてのこの新規な動的解析結果は、ヒトのT-ALL検体から得られた証拠によって裏付けられており、化学療法耐性T-ALL細胞の侵襲と生存に対処するための将来の治療的介入は、がん細胞と特異的な骨髄ストローマとの相互作用ではなく、がん細胞の遊走とその周辺微小環境との無差別的な相互作用を標的とすべきであることを明確に示している。

