ナノフォトニクス:異分子二量体におけるエネルギー移動の実空間計測
Nature 538, 7625 doi: 10.1038/nature19765
エネルギー移動は、光合成や人工的なエネルギーハーベスティングデバイスにおいて中心的な役割を果たすことから、励起ダイナミクスを調べ、相互作用する分子間のエネルギー移動における分子レベル制御をプローブするために、光学分光法を用いて広く研究されてきた。しかし、従来の光学分光法は、空間分解能が数百ナノメートルに限られているため、そうしたエネルギー移動過程に関係するナノスケールの空間的特徴を明らかにすることはできない。これに対して、走査トンネル発光分光法は、単分子エレクトロルミネセンス、局在プラズモンの吸収、量子干渉効果から、エネルギー非局在化、バレー間電子散乱まで、さまざまな現象に伴うエネルギーダイナミクスを実空間においてサブ分子空間分解能で明らかにしてきた。今回我々は、マグネシウムフタロシアニン(MgPc)と遊離塩基のフタロシアニン(H2Pc)からなる個々の分子二量体に走査トンネル発光分光法を適用して、走査トンネル顕微鏡のトンネル電流でMgPcを局所的に励起させたところ、MgPcから隣接H2Pcへの共鳴エネルギー移動が起こり、その結果H2Pc分子から発光信号が生じることを見いだした。また、H2Pcの第二の一重項励起状態(S2)を励起させると、MgPcの第一の一重項励起状態(S1)へのエネルギー移動の後、H2PcのS1状態へのエネルギー移動が起こるという往復共鳴エネルギー移動が観測された。さらに我々は、H2Pcの互変異性化によって二量体系内のエネルギー移動特性が変化することを示しており、これによって実質的にH2Pcが、共鳴エネルギー移動挙動のブリンキングによって機能する単分子エネルギー移動バルブデバイスとなる。

