Letter
人類学:ヒトの致死的暴力の系統発生学的ルーツ
Nature 538, 7624 doi: 10.1038/nature19758
ヒトの同種個体間の暴力の心理学的、社会学的、進化的ルーツは、2000年以上にわたって知識人の関心を引きつけてきたが、いまだに議論が続いている。今回我々は、ヒトを含めた哺乳類の攻撃性には系統発生学的要因がかなり大きいという仮定に基づいて、そのルーツを理解するための概念的な手法を提案する。哺乳類の広範囲にわたるさまざまな試料から死因に関するデータを集め、同種個体に原因のある死の割合を見積もり、系統発生学的比較手法を用いてヒトについてもこの値を予測した。すると、系統発生学的に予測される個人間の暴力に起因する死の割合は2%であった。この値は霊長類とサルの進化的祖先について系統発生学的に推定された値とほぼ同じであり、ある程度のレベルの致死的暴力は、哺乳類という系統内でのヒトの位置が原因で起こることを示している。またこの割合は、先史時代のバンドや部族に見られる割合とも同程度であり、我々ヒトが先史時代に、哺乳類共通の進化史から予測されるのと同程度の致死的暴力性を有していたことを示している。しかし、致死的暴力のレベルはヒトの歴史の中で変化しており、ヒト集団の社会的・政治的組織の変化と関連している可能性がある。今回の研究により、ヒトの歴史を通して見られる致死的暴力のレベルを比較するための対照となる、詳細な系統発生学的・歴史的状況が明らかになった。

