神経科学:Rho GTPアーゼによる補完はホモシナプスおよびヘテロシナプスのBDNF依存的な可塑性の基礎である
Nature 538, 7623 doi: 10.1038/nature19784
Rho GTPアーゼタンパク質のRac1、RhoA、Cdc42は、樹状突起スパインのアクチン細胞骨格の調節に中心的役割を担っているので、樹状突起スパインの構造的および機能的な可塑性を制御して、最終的には学習や記憶を制御する。これまでの研究から、これらのGTPアーゼが時空間的に正確に協調することが細胞の形態形成のいくつかの型に重要であることが示されているが、樹状突起スパインに構造的な可塑性が生じる過程でのそのような協調の本質は明らかになっていない。今回我々は、ネズミの樹状突起スパインの構造的長期増強(sLTP)のメカニズムが「3分子モデル」で説明できることを示す。このモデルでは、3つのGTPアーゼRac1、RhoA、Cdc42の局所での同時活性化がsLTPの原因となる。樹状突起スパインで3つのシグナルが完全に重なり合うことがsLTPに必要であるが、部分的な重なり合いはsLTPをプライミングする。sLTPの際のこれらのGTPアーゼの時空間的な活性化パターンを追跡すると、そのような時空間シグナルによる補完により、シナプス可塑性の3つの不可欠な特徴が全て説明されることが分かった。つまり、1)脳由来神経栄養因子(BDNF)による可塑性の促進では、BDNFのシナプス後供給がCdc42とRac1を活性化するがRhoAを活性化しない、2)ヘテロシナプスでのsLTPの促進は、拡散性のRac1およびRhoAの活性によって伝達される、3)入力の特異性は、樹状突起スパインに限定されるCdc42の活性によるものである。従って我々は、3つの分子の制御された補完によりシグナルの特異性とシナプス可塑性のプライミングを同時に確保する、という樹状突起における生化学的計算の1つの様式を明らかにした。

