がん:XPO1依存性の核外輸送はKRAS変異型肺がんでのドラッガブルな脆弱性である
Nature 538, 7623 doi: 10.1038/nature19771
最も致死性の高いヒトがんの多くでは発がん性KRASタンパク質の関与が一般的であることや、患者試料で体細胞性のKRAS変異型対立遺伝子が容易に検出されることから、KRAS活性を阻害する薬剤の開発を目指す持続的かつ精力的な努力が行われてきた。しかし、KRAS駆動性がんの原因となる機構のうち標的となり得るものには細胞系譜間および細胞系譜内に広く多様性が見られること、多くの候補となる合成致死性相互作用の薬理学的利用可能性が限られていること、そして有効であるはずの標的治療に予期せぬ耐性機構が迅速に出現することにより、進歩が阻まれてきた。今回我々は、KRAS変異型非小細胞肺がん細胞が、受容体依存性核外輸送に、迅速かつ特異的に、細胞自律性依存していることを実証する。ヒト非小細胞肺がん細胞株106株を利用して、複数のゲノムの、データ主導の方法を用い、3万9760の短鎖干渉RNAのプールによって4725の生物学的過程をスクリーニングし、広範な表現型多様性を示すKRAS変異型細胞の生存に選択的に必要な過程を調べた。核輸送装置は、過程レベルで統計的に有意な唯一の識別子であった。核外輸送受容体XPO1(別名CRM1)を臨床で利用可能な薬剤を用いて化学的にかく乱すると、in vitroおよびin vivoの両方で、天然あるいは改変した発がん性KRASとのロバストな合成致死性相互作用が明らかになった。XPO1阻害剤感受性の基礎となる主要な機構は、核へのIκBα(別名NFKBIA)の蓄積に対する不耐性であり、結果としてNFκB転写因子活性が阻害される。KRAS変異と同時に見られるFSTL5変異と関連する内因性の耐性が検出され、この耐性はこれまでには分かっていなかったFSTL5–Hippo経路調節軸を介したYAP1活性化の結果であることが明らかになった。これはKRAS変異型肺がんの約17%に起こっており、YAP1–TEAD阻害剤の併用投与で克服可能である。これらの知見は、臨床で利用可能なXPO1阻害剤を、ゲノミクスによる患者の選択および観察と組み合わせると、肺がん患者のかなり大きいコホートに対する有望な治療戦略であることを示している。

