細胞生物学:ヒトのミトコンドリア複合体Iの構築と機能には、補助サブユニットが不可欠である
Nature 538, 7623 doi: 10.1038/nature19754
複合体I(NADH:ユビキノン酸化還元酵素)はミトコンドリアの呼吸鎖の最初に位置する酵素で、ヒトでは45個のサブユニットからなっており、多数のサブユニットを持つ既知の膜タンパク質複合体の中で最大のものの1つである。複合体Iは呼吸鎖複合体III、IVと共に超複合体を形成しており、ATP合成のために膜内外にプロトン勾配を形成するには、これら全てが必要である。複合体Iはまた、損傷をもたらす活性酸素種の主な発生源でもあり、その機能不全はミトコンドリア病、パーキンソン病や老化に関係している。細菌とヒトの複合体Iでは、酵素機能に不可欠な14個のコアサブユニットが共通しているが、残り31個のヒトの補助サブユニットの役割や必要性ははっきりしていない。複合体にこれらの補助サブユニットを組み込むことで、細胞のエネルギーコストは上昇する。また、複合体Iの生合成には多数の会合因子の関与が必要である。今回我々は遺伝子編集を行って、各補助サブユニットをノックアウトしたヒト細胞系列を作製した。そして、25個のサブユニットは機能を持った複合体の構築に絶対に必要であり、1個のサブユニットは細胞の生存に不可欠であることが分かった。これらの細胞系列の定量的プロテオーム解析により、各サブユニットの喪失が、同じ構造モジュール内にある他のサブユニットの安定性に影響することが明らかになった。特定のモジュールの消失後のプロテオーム変化を解析したところ、ATP5SLとDMAC1が複合体Iの膜アームの末端部分の構築に必要なことが判明した。これらの結果は、ヒトの複合体Iの構造と機能に、補助サブユニットが広い重要性を持つことを示している。遺伝子編集技術をプロテオミクスと組み合わせると、多数のサブユニットを持つ大型複合体を詳細に解析する強力な手法になり、これは複合体の機能不全の細胞レベルでの研究を可能にする。

