神経科学:中枢時計で駆動されるバソプレッシン性神経伝達が入眠前の予期的渇きを仲介する
Nature 537, 7622 doi: 10.1038/nature19756
概日リズムは、地球の24時間の明暗周期という拘束を予期し、動物を適応させるよう進化してきた。視交叉上核(SCN)の時計ニューロンで周期性を生み出す分子過程は詳しく分かっているが、中枢時計からの軸索投射によって行動リズムが駆動される機構についてはまだ分かっていない。今回我々は、マウスで睡眠期[ZT(Zeitgeber time)0–12]に先立って水分摂取が増し、この行動はもっぱら中枢時計によって促されており、生理的な要求によって動機付けされてはいないことを示す。入眠前の水分摂取量増加がないマウスは、睡眠期の終わり近くに顕著な脱水を起こすことから、この水分摂取が夜間の水とミネラルのバランス維持に寄与していることが示される。また、この作用はSCNのバソプレッシン(VP)ニューロンの活動に特異的に依存していて、VPニューロンは終板血管器官(OVLT)の渇きニューロンに投射しており、VPはそこで神経伝達物質として放出される。SCNのVPニューロンは、予期期(ZT21.5–23.5)に電気的に活動し、シナプス後部のVP V1a受容体と下流の非選択的陽イオンチャネルの活性化を介してOVLTニューロンを脱分極・興奮させる。予期期より前(基底期、ZT19.5–21.5)にVP放出を光遺伝学的に誘発すると、OVLTニューロンは興奮し、水分摂取高進が促される。逆に、予期期中にVP放出を光遺伝学的に抑制すると、OVLTニューロンの発火が抑制され、対応する水分摂取高進が見られなくなる。今回の知見から、予期的渇きの存在が明らかになり、この行動が中枢時計ニューロンからのVP放出を介した興奮性ペプチド性神経伝達によって駆動されることが示された。

