環境微生物学:全球的に大量に存在する海洋ウイルスのエコゲノミクスと起こり得る生物地球化学的影響
Nature 537, 7622 doi: 10.1038/nature19366
海洋微生物は、全球規模での生物地球化学的循環の原動力となっているが、この循環を制約しているのが、微生物群集の構成や代謝活性、進化の道筋に影響を与えるウイルスである。ウイルスは試料採取と培養が難しいため、ゲノムレベルでのウイルスの多様性については報告がほとんどなく、研究も非常に低調で、解明されているのは、既知の海洋表層ウイルスの1%未満にとどまっている。今回我々は、タラ号海洋プロジェクトとマラスピーナ海洋探検計画の際に採取された海洋表層および深海に生息するウイルスの両方から完全なゲノムと大型のゲノム断片をアセンブリングし、得られた「全球海洋ウイローム」データセットを解析して、大量に存在する二本鎖DNAウイルスの全球規模の地図(ゲノム情報と生態学的情報とが備わっている)を作製した。全部で1万5222の表海水層ウイルス集団および中深海水層ウイルス集団が明らかにされ、これらは867個のクラスター(おおよそ属レベルの集団である)を構成していることが分かった。これによって、既知の海洋ウイルス集団の数はほぼ3倍に、バクテリアおよびアーキアに感染するウイルスの属候補の数は2倍となり、集団レベルでもクラスターレベルでも、表海水層ウイルス集団のほぼ完全な標本が得られた。867のウイルスクラスターの中の38個は局地的に、あるいは全球規模で大量に存在し、これらを合わせると、世界のどこで採取した海洋ウイローム試料であっても、これらがウイルス集団のほぼ半分を占めることになる。これらのクラスターの3分の2は新たに記述されたウイルスで、その中にこれまで培養された例はないが、コンピューター解析によってほとんどが生態学的に意味を持つ、優勢な微生物宿主に関連付けられた。また、ウイルスがコードする補助代謝遺伝子が243個見つかり、そのうちこれまで知られていたのは95個だけだった。これらの補助代謝遺伝子のうち4つ[dsrC、soxYZ、P-II(別名glnB)、amoC]をさらに詳しく解析したところ、大量に存在するウイルスは海洋表海水層全体にわたって硫黄循環および窒素循環に直接影響を及ぼしていることが明らかになった。今回のウイルスカタログと機能解析は、ウイルスが栄養素の循環と栄養ネットワークに重要な役割を担う生態系モデルに、これらを有意な存在として組み込むのに必要な基盤となるだろう。

