神経科学:ある四肢麻痺患者における機能的運動の皮質による制御の回復
Nature 533, 7602 doi: 10.1038/nature17435
世界で数百万人が、脳と筋肉の間の信号経路の障害による麻痺疾患に苦しんでいる。失われた機能を取り戻すために神経機能代替装置が考案されており、これらを使うことによって遮断された神経系を迂回する電子的な「神経バイパス」を作ることができる可能性がある。これまでに、大脳皮質から記録された信号を解読して運動に関連する情報を抽出でき、非ヒト霊長類や麻痺患者が、運動を想像することでコンピューターやロボットアームを制御できるようになることが示されている。非ヒト霊長類では、この種の信号を用いて、化学物質で麻痺させた腕の筋肉を動かす試みも行われている。今回我々は、皮質内から記録した信号を筋活性化にリアルタイムでつなげて、麻痺患者の運動を回復させられることを示す。頸髄損傷により四肢麻痺となったある被験者の大脳皮質に、微小電極アレイを長期的に植え込み、運動野からマルチユニット活動を記録した。機械学習アルゴリズムを適用して、ニューロン活動を解読し、患者専用の高分解能神経筋電気刺激システムを介して前腕筋の活動を制御した。この刺激システムでは指1本ごとの運動が可能で、患者は6種類の異なる手首と手の運動を長期間制御することができた。さらに、患者はこのシステムを使って、日常生活と関連した機能課題を実行することもできた。臨床評価により、患者がこのシステムを使っているとき、片側の運動障害が第五〜第六頸髄(C5–C6)レベルから第七〜第一胸髄(C7–T1)レベルへと改善され、対象物を握る・操る・放すという重要な能力を獲得したことが示された。我々の知るかぎりにおいて、これは麻痺患者の皮質内から記録した信号を使って筋活動を有効に制御した最初の例である。この結果は、世界中の麻痺患者のための神経機能代替技術の進歩に大きな意義を持つ。

