Letter
大気化学:海洋境界層における反応性窒素の急速な循環
Nature 532, 7600 doi: 10.1038/nature17195
窒素酸化物は、大気中の2次エアロゾルの生成の他、オゾンや、大気の自浄能力を制御するヒドロキシルラジカルなどの大気中オキシダントの生成に不可欠である。窒素酸化物の主な酸化生成物である硝酸は、永続的な窒素酸化物シンクであると以前から考えられている。しかし、モデル研究からは、対流圏における窒素酸化物に対する硝酸の割合は観測結果よりも多いと予測されている。観測結果とモデル研究を一致させるために、硝酸から窒素酸化物へ再循環する「再NOx化(renoxification)」過程が提案されているが、この過程に関与する機構はまだよく分かっていない。今回我々は、北大西洋上空の航空機測定から得られたデータを提示し、汚染されていない海洋境界層において、粒子状硝酸塩の光分解を介した、硝酸から亜硝酸や窒素酸化物への急速な再循環の証拠を見いだした。さらに、室内実験から、フィルターに捕捉された粒子状硝酸塩の光分解速度が硝酸ガスより2桁高く、主な生成物が亜硝酸であることが実証された。また、マスター化学機構に基づくボックスモデル計算から、典型的な海洋境界層の条件下では、主に粒子状硝酸塩の光分解によって、正午に観測される亜硝酸濃度と窒素酸化物濃度が維持されることが示唆された。海洋が地球表面の70%以上を占めることを踏まえると、粒子状硝酸塩の光分解が対流圏の窒素酸化物の大きな供給源である可能性があると、我々は提案する。対流圏のオキシダントと大気中の2次エアロゾルの生成量は、窒素酸化物の直接排出が極めて少ない遠隔海洋域における窒素酸化物の再循環によって、全球規模で増える可能性がある。

