構造生物学:セパラーゼによるコヒーシン切断の構造基盤
Nature 532, 7597 doi: 10.1038/nature17402
染色体を誤りなく分離するには、染色体が有糸分裂紡錘体に適切に結合した後に染色体の接着をタイミングよく解除しなくてはならない。セパラーゼは、酵母からヒトに至る生物でこのような接着の解除に不可欠とされる。セパラーゼは、コヒーシンのサブユニットであるクレイシンを切断し、コヒーシンリングを開いて染色体が分離できるようにする。コヒーシンの切断は、阻害的に働くシャペロンのセキュリンなどのセパラーゼ関連調節タンパク質や酵素と基質の両方のリン酸化によって、空間的・時間的に制御されている。この過程の調節異常は、染色体の誤分離や異数性を引き起こし、がんや先天性欠損症の一因となる。セパラーゼの原子レベルでの構造は、その機能が不可欠であるにもかかわらず、まだ決定されていない。今回我々は、好熱性真菌Chaetomium thermophilum由来セパラーゼのプロテアーゼドメインについて、単独の場合に加えて、コヒーシン切断部位由来のリン酸化されていない、あるいはリン酸化された阻害性ペプチドとそれぞれ共有結合した場合の結晶構造を報告する。これらの構造から、セパラーゼがコヒーシンを認識する仕組み、またポロ様キナーゼ1(Plk1)よるコヒーシンのリン酸化が切断を促進する仕組みが明らかになる。以前行われた細胞での研究結果と一致して、セパラーゼの切断コンセンサス配列と部分的にマッチする、保存されたモチーフ中の2か所のセキュリン残基を変異させると、セキュリンがセパラーゼの阻害剤から基質に変換されることが分かった。今回の研究は、セパラーゼによる基質切断の原子レベルでの機序を確立したもので、セキュリンによる競合阻害の存在を示唆している。

