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物性物理学:超伝導硫化水素系における量子水素結合の対称化

Nature 532, 7597 doi: 10.1038/nature17175

陽子の量子性は、水素化合物の構造特性や物理特性に大きな影響を及ぼすことがある。例えば、H2Oの高圧相では、陽子の量子的なゆらぎによって水素結合が対称化し、相図における非対称構造と対称構造の境界が30 GPa低下する。今回我々は、最近発見された硫化水素超伝導体において類似した量子対称化が生じることを示す。この硫化水素超伝導体の超伝導転移温度Tcは155 GPaで203 Kであり、これまで報告されている超伝導体の中で最も高い。この系の超伝導は、硫黄原子が体心立方格子を組むように配列した、化学式がH3Sの化合物(硫化三水素)が形成されることによって生じる。水素原子を古典粒子として扱えば、約175 GPaより高い圧力で、Im‾3m対称性を持つ構造における2個の硫黄原子のちょうど中間に水素原子が存在すると予測される。これより低い圧力では、水素原子は中心から外れた位置へ移動し、R3m対称性を持つ構造において短いH–S共有結合と長いH…S水素結合を形成する。X線回折実験では、H3Sの化学量論と硫黄の格子部位は確かめられたが、2つの相を識別することはできなかった。原子核の量子運動によってこの対称化圧力が、H3Sでは72 GPa、D3Sでは60 GPa低下することが、ab initio密度汎関数理論計算から示された。従って、高いTcが測定された圧力範囲ではIm‾3m相が支配的になると、我々は予測する。観測されるTcの圧力依存性は、Im‾3m相では今回の計算によって正確に再現されたが、R3m相では再現されなかった。従って、陽子の量子性によって、H3Sの超伝導相図が根本的に変化するといえる。

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