生理学:PGC1αは酸化的代謝を腎保護と結び付けるNADの生合成を促す
Nature 531, 7595 doi: 10.1038/nature17184
尿細管内では溶質が濃度勾配に逆らって継続的に濃縮されていて、そのエネルギー負荷は腎臓を特に虚血に陥りやすくする可能性がある。急性腎障害(AKI)は全入院患者の3%で起こっている。本研究では、ミトコンドリア新生の調節因子PGC1αが、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)生合成の調節により、腎障害からの回復に重要な決定因子として働くことを示す。Pgc1α−/−(別名Ppargc1a−/−)マウスでは、腎虚血後にNAD前駆物質のナイアシンアミド(NAM、別名ニコチンアミド)の局所的欠乏や脂肪の著しい蓄積が見られ、正常機能への復帰が障害される。また、外因性のNAMは、虚血後のPgc1α−/−マウスで局所的なNADレベルや脂肪蓄積、腎機能を改善する。尿細管発現誘導型トランスジェニックマウス(iNephPGC1α)はNAM補給の効果を再現し、虚血後に局所的なNAD増加や、脂肪蓄積量の低下、腎機能の改善が見られた。PGC1αはアミノ酸からNADをde novo合成する酵素群を協調的に上方制御するが、PGC1αの欠失やAKIはこのde novo経路を減弱させる。NAMは酵素NAMPTを介してNAD合成を亢進し、脂肪分解産物であるβヒドロキシ酪酸の産生を増大させて、腎機能を維持する分泌性オータコイドであるプロスタグランジンPGE2の産生を増加させる。NAM投与は確立された虚血性AKIを回復させ、毒物による全く別の腎不全モデルでもAKIを起こりにくくした。βヒドロキシ酪酸シグナル伝達やプロスタグランジン産生の阻害はどちらもPGC1αに依存する腎保護を無効にする。老化の際や代謝的に活発な器官の機能にミトコンドリアの健常性が重要であることを考えると、今回の結果はPGC1αに依存するストレス抵抗性の獲得にNAMやNADが重要なエフェクターであることを示している。

