構造生物学:ミコセロシン酸シンターゼは還元性ポリケチドシンターゼの構造の好例である
Nature 531, 7595 doi: 10.1038/nature16993
ポリケチドシンターゼ(PKS)は、重要な生物学的また薬理学的活性を持つ天然物を生産する生合成装置である。その産物が並外れて多様なのは、この酵素のモジュラー構造に起因する。モジュラー型PKS(modPKS)は生産ライン中のモジュールの順序に従って反応を触媒するが、反復型PKS(iPKS)は、真菌のiPKS(fiPKS)の例で見られるように、ただ1個のモジュールを繰り返し使う。しかし、場合によっては、modPKSでも順序に従わない反復型の反応が観察され、こうした反応は生産ラインの環境によって制御されている。PKSは、脂肪酸シンターゼで見られるように、縮合領域と修飾領域が構造的、機能的に分離しているのが特徴である。PKSは実際上極めて重要であるにもかかわらず、十分な還元性を持つ完全な修飾領域全体の構成の詳細は、いまだに解明されていない。今回我々は、スメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)のミコセロシン酸シンターゼについて、縮合領域と修飾領域の構造に基づいたハイブリッド結晶構造を報告する。ミコセロシン酸シンターゼは完全な還元を行うiPKSで、modPKSによく似ており、マイコバクテリアのミコセロシン酸シンターゼ様PKSの原型といえる。ミコセロシン酸シンターゼは、マイコバクテリアの重要な病原性因子であるC20–C28分岐鎖脂肪酸の生合成に関わっている。今回の構造データから、リンカーでつながれた二量体という修飾領域の構成が明らかになり、PKSでの動態とコンホメーション変化の連動が可視化された。比較X線小角散乱(comparative SAXS)データに基づいて、観察された修飾領域の構造はmodPKSでも一般的である可能性が考えられる。リンカーを用いるこのような構成は、PKSモジュールの特徴的な可変性がPKS産物の多様性をもたらす大きな要因であることの論拠となる。この包括的構造モデルを用いれば、PKSの機能の詳細な解析やその根本的再構築が可能になるだろう。

