創薬:エボラウイルスに感染したアカゲザルでの低分子化合物GS-5734の治療効果
Nature 531, 7594 doi: 10.1038/nature17180
西アフリカで起こったエボラウイルス(EBOV)感染症の直近の大流行は、患者数、死亡者数、地理的分布、患者が発生した国の数に関してこれまでに例のないものであり、急性のエボラウイルス病(EVD)や続発症の治療と予防に使える、安全で効果が高く、入手しやすい抗ウイルス薬の必要性が明確になった。しかし、抗ウイルス治療薬で認可を得られたものや臨床効果が実証されたものはまだない。今回我々は、EBOVに対する抗ウイルス活性を持つ新規な低分子化合物GS-5734について報告する。アデノシン類似体のモノホスホロアミダートであるプロドラッグのGS-5734は、細胞を使ったアッセイではEBOVの多数の変異体や他のフィロウイルスに対して抗ウイルス活性を示す。GS-5734を加えてin vitroで培養したヒトの多種類の細胞では薬理活性を持つヌクレオシド三リン酸(NTP)が効率よく形成され、このようなNTPは、プライマー伸長アッセイ(EBOVポリメラーゼの代わりにRSウイルスRNAポリメラーゼを使っている)で代替基質として働き、RNA鎖伸長を終結させる。GS-5734を非ヒト霊長類に静脈内投与すると、末梢血中の単核細胞中でNTP濃度が維持され(半減期14時間)、薬剤が届きにくくウイルスの複製が続く「聖域」である精巣、眼、脳などにもNTPが送達されることが分かった。EVDのアカゲザルモデルに12日間にわたって、体重1 kg当たり10 mgのGS-5734を1日1回静脈内投与したところ、EBOVの複製が強力に抑制され、EBOV感染サルの100%が致死的な症状を起こすことなく守られ、臨床症状や病態生理学的マーカーが改善した。投与開始がウイルス曝露の3日後で6頭のEBOV感染サルのうち2頭で全身的にウイルスRNAが検出された場合でも、同様な結果が得られた。これらの結果は、非ヒト霊長類で低分子の抗ウイルス化合物がEBOVに対してかなりの曝露後防御効果を示した初めての例である。GS-5734は、フィロウイルス、アレナウイルス、コロナウイルスなどの他の病原性RNAウイルスに対してもin vitroで広範囲にわたる抗ウイルス活性を示すことから、医療に幅広く使用できると予想される。またGS-5734は大規模製造が可能であり、現在、安全性や薬物動態を調べる臨床研究が進行中である。

