Letter
惑星科学:タルシスの後期形成と初期火星に対するその影響
Nature 531, 7594 doi: 10.1038/nature17171
火星最大の火山複合体であるタルシス地域は、太陽系内でも最大の火山複合体である。タルシスの表面はアマゾニアン紀(30億年近く前から現在まで続く)を起源とする若い溶岩流で覆われているが、その成長が始まったのはノアキアン紀(37億年前以前)だった。タルシスの位置によって、火星の自転軸に対して惑星の再配向(真の極移動;TPW)が生じ、それがこの火山地帯が現在の赤道直下の位置にある原因となっている。リソスフェアに対するタルシスの荷重がノアキアン紀/初期ヘスペリアン紀(35億年前以前)の渓谷ネットワークの配向に影響を及ぼしたため、河川作用による浸食前にタルシス地形の大半が形成し終えたことが示唆されている。本論文では、タルシスが形成される前、つまり、北半球と南半球の間の標高差(半球の二分性)によって火星の自転軸が制御されていた時の火星の回転形状(平衡状態での形)と表面地形を計算した。我々は、渓谷ネットワークに観測された方向はこの形状での地形学的な勾配と矛盾しないため、タルシス荷重の存在は必要ではないことを示す。さらに、赤道に対して傾いた小円に沿った渓谷の分布は、TPW前の地形における南半球緯度帯に対応していることを見いだした。初期火星の気候モデルシミュレーションをTPW前の地形に適用して、南半球の熱帯における氷や水の選択的な集積を予測した。タルシスの後期成長は、渓谷浸食と同時期に生じており、TPW前の自転極付近に氷河環境が存在していたことや、タルシスからの火山性ガスの放出と火星表面での液体水の安定性が関連している可能性など、火星の初期の地質史に対していくつかの示唆を与える。

