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ナノスケール材料:原子時計遷移による分子スピンキュービットのコヒーレンス増強

Nature 531, 7594 doi: 10.1038/nature16984

量子計算は、量子ビット(キュービット)の概念を中心に展開している情報科学の新たな分野である。主な障壁は、環境との相互作用が量子性を破壊することで生じる、こうしたキュービットの著しい脆弱性である。この現象はデコヒーレンスと呼ばれ、基礎的研究の対象となっている。キュービットの候補には、超伝導回路、量子光学共振器、極低温原子、スピンキュービットなど多数が競合しており、おのおのに強みと弱みがある。スピンキュービットを用いる際、最も強いデコヒーレンス源は磁気双極子相互作用である。これを最小化するため、反磁性マトリックス中に希薄な密度でスピンが配置されることが多い。極限的に希薄な例ではシリコン中の単一リン原子があるが、分子マトリックス中の典型的な比率は1万個のマトリックス分子当たり1個の磁性分子である。しかし、希薄化によるデコヒーレンスの低減と、スピンキュービット間の相互作用を通した量子演算の実現には根本的な矛盾が存在する。この矛盾を解消するため、量子ハードウエアの設計とエンジニアリングでは、望ましい物理的なふるまいを得るため磁性分子の電子構造を化学的に調節する「ボトムアップ」的手法が役に立つ。本論文では、極端な希薄化に頼ることなく、固体分子スピンキュービットのコヒーレンスを増強する方法を示す。この方法は、大きなトンネリングギャップの結晶場基底状態を持つ分子構造の設計に基づいている。このギャップから、量子スピン動力学が双極子デコヒーレンスから保護される最適動作点、つまり原子時計遷移が生じる。この手法は、ホルミウム分子ナノ磁性体において、著しく高い濃度で長いコヒーレンス時間(温度5 Kにおいて、最大8.4マイクロ秒)が得られたことで例証された。今回の知見は、分子スピンキュービットを用いた量子計算への新しい道を開くものである。

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