構造生物学:ベータレトロウイルスのインタソームの機能に必要な新規八量体インテグラーゼ構造を低温電子顕微鏡によって明らかにする
Nature 530, 7590 doi: 10.1038/nature16955
レトロウイルスのインテグラーゼは、ウイルスDNAの宿主標的DNAへの組み込みを触媒しており、この反応は全てのレトロウイルスの生活環に不可欠の過程である。スプーマウイルスに属するプロトタイプ泡沫状ウイルス由来のインテグラーゼ–ウイルスDNA複合体、すなわちインタソームの以前に行われた構造解析からは、機能を持つインテグラーゼ四量体が明らかにされ、他のレトロウイルス属由来のインタソームも四量体インテグラーゼを用いていると一般に考えられている。しかし、既知の全ての病原性種を含むオルソレトロウイルスのインタソームの構造の特徴は、まだ調べられていない。今回我々は、単粒子低温電子顕微鏡法とX線結晶構造解析を用いて、ベータレトロウイルスであるマウス乳がんウイルスのインタソームで予想外の八量体インテグラーゼ構造を決定した。この構造は、2つのコアインテグラーゼ二量体(ウイルスDNA両末端と相互作用し、プロトタイプ泡沫状ウイルスのインテグラーゼ四量体と構造的によく似ている)と、その側方に隣接する2つのフランキングインテグラーゼ二量体(インテグラーゼのカルボキシ末端ドメインを介してコア構造に結合している)から構成されている。四量体インテグラーゼという構成要素だけで組み込みを触媒するのに十分であると考えられてきたにもかかわらず、フランキングインテグラーゼ二量体はマウス乳がんウイルスウイルスのインテグラーゼ活性に必要だった。インテグラーゼ八量体が見つかったことで、触媒コアドメインとカルボキシ末端ドメインをつなぐ進化的に制約されたリンカー領域のためにシス状態を採れないインタソームコアへ重要なカルボキシ末端ドメインが提供できるようになり、ベータレトロウイルスだけでなくアルファレトロウイルスの謎も解決される。マウス乳がんウイルス・インタソームの八量体構造は、レトロウイルスのDNA組み込みの構造基盤に関する新たな手掛かりを与えるものだ。

