Letter

構造生物学:β1アドレナリン受容体のアロステリックシグナル伝達ネットワークの主鎖NMRによる解明

Nature 530, 7589 doi: 10.1038/nature16577

Gタンパク質共役受容体(GPCR)は生理的に重要な膜貫通型シグナル伝達タンパク質で、細胞外リガンドの結合に応じて細胞内応答を引き起こす。近年、GPCRの結晶学的研究には大きな進展が見られているが、動態に関する情報が無いために、リガンドが誘発するシグナル伝達の詳細については十分な解明がなされていない。この種の情報は、原理的にはNMRによって取得可能だが、これまでに得られているのは真核生物GPCRのいくつかの側鎖と機能との関連に関する限られたデータだけだった。今回我々は、シチメンチョウβ1アドレナリン受容体(β1AR)の熱安定化変異体の主鎖上の部位では事実上どこであっても、受容体の動きを追跡できることを明らかにする。真核生物の発現系で[15N]バリンで標識することにより、20以上の共鳴構造が解かれ、6種類のリガンド複合体とアポ型の構造と動態の情報が得られた。さまざまなリガンドに対する応答は、結合ポケット周辺では均一ではないが、ヘリックス5(TM5)の細胞内側で変換されて均質な読み出し情報になり、これはGタンパク質経路に対するリガンドの有効性と線形相関の関係にあることが分かった。活性に関係する複数の熱安定化点変異の影響は、変異を天然の配列に戻すことによって評価された。リガンドに対する応答はほとんど変化しなかったが、Gタンパク質を模倣したナノボディNB80の結合とGタンパク質の活性化は、2個の保存されたチロシン(Y227、Y343)が復元されたときにだけ観察された。NB80の結合は、細胞外リガンド進入ポケットを含めた受容体全体に、非常に強いスペクトル変化を引き起こした。これは、完全に熱安定化した受容体であってもTM5に活性化に向けた動きが起こるが、完全な活性を持つ状態に到達できるのは、Y227とY343が存在し、Gタンパク質に類似した結合相手により安定化されている場合だけであることを示唆している。点変異やリガンド応答による化学シフト変化の複合解析により、アロステリック活性化経路における重要な結び付きが突き止められ、GPCR中のシグナル伝達ネットワークを高分解能で解明する一般的な実験手法が示された。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度