Letter

古海洋学:最終氷期に赤道太平洋は鉄肥沃化しなかった

Nature 529, 7587 doi: 10.1038/nature16453

赤道太平洋は、全球海洋における主要な高栄養塩低クロロフィル海域の1つである。こうした海域では、硝酸塩やリン酸塩などの利用可能な多量栄養素の消費は、重要な微量栄養素である鉄の存在量が少ないためある程度制限されていると考えられている。最終氷期(LGP)には大気中の塵の堆積がより多く、赤道太平洋が鉄肥沃化していた可能性があるが、赤道太平洋における氷期の塵フラックスの増加が一次生産力に及ぼした影響はまだよく分かっていない。本論文では、赤道太平洋中央部で得られた完新世(0~1万年前)とLGP(1万7000年~2万7000年前)の6つのコア試料の、塵(232Th代理指標に基づく)、植物プランクトンの生産力(オパール、231Pa/230Th、過剰Baに基づく)、硝酸塩消費の程度(有孔虫結合δ15Nに基づく)の子午線断面を提示する。我々は、LGPにおける赤道太平洋中央部の塵の堆積は完新世より2~3倍多かったが、生産力は同じかより低く、硝酸塩消費の程度は同じだったことを見いだした。こうした生物地球化学的知見は、氷期の塵フラックスは比較的多かったが、赤道太平洋中央部を大きく鉄肥沃化するには十分ではなかったことを示唆している。これは、LGPにおける塵の絶対堆積速度が、完新世の速度よりは大きかったものの、非常に低かったためである可能性がある。低い生産力は、硝酸塩消費が変化しなかったことと相まって、赤道太平洋中央部ではLGPにおいて海中の主要な栄養素の濃度が低かったことを示唆している。我々は、現在こうした栄養素は亜南極帯の南大洋から主に供給されているので、おそらく亜南極帯の海域では塵の絶対フラックスが大きかった結果鉄の肥沃化が進んだため、赤道太平洋中央部のデータは亜南極帯における栄養素の消費がより多かったことと矛盾しないと考える。従って、氷期における亜南極帯の鉄肥沃化は、最終的には赤道太平洋の生産力を高めるのではなく低下させるように働いたと思われる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度