神経科学:キノコ体出力ニューロンでの可塑性による嗅覚符号化の個別化
Nature 526, 7572 doi: 10.1038/nature15396
全ての感覚神経回路は、脳の高次領野に上行し、そこでは刺激が疎で刺激特異的な活動パターンで表現されているが、ネットワークが収束したときの、神経回路の下行側の感覚符号化についてはあまりよく分かっていない。昆虫では、キノコ体が嗅覚系の疎な符号化を研究するための重要なモデル系となってきた。正確な記憶の形成には、キノコ体でのこのフォーマットが重要である。ショウジョウバエ(Drosophila)では、キノコ体の2000個のケニヨン細胞が、わずか34個(解剖学的細胞タイプとしては21種)のキノコ体出力ニューロン(MBON)に収束することが最近示されている。今回、我々が知るかぎりでは初めて、キノコ体回路の第4層での嗅覚表現について、包括的な見方を提示する。感覚符号化の原理に従って、明らかな転換がここで起こることが分かった。MBONのチューニング曲線は互いに強く相関している。これは、回路のより初期の層でチューニングの脱相関が進行する過程とは、明らかに対照的である。その代わりに、細胞集団のレベルでは、においの表現が再フォーマットされ、異なるにおい表現の間に正と負の相関が生まれる。単一細胞レベルでは、他とはっきり区別できるMBONは、個体が異なると非常に異なるチューニング特性を示すが、同一個体の左右半球の同ニューロンは、ほとんど同じチューニング特性を示す。従って、チューニングの個別化された調整は、嗅覚経路のこのレベルで生じている。また、この個別化は、学習に関連する遺伝子rutabagaを必要とする能動的な過程であることが分かった。最終的に、神経回路は、疎な層での高度に刺激特異的な情報を、限られた数の異なる運動出力の上に、柔軟に割り付けなくてはならない。今回観察された感覚表現の再フォーマット化は、嗅覚系におけるこの感覚から運動への変換の開始点に当たる可能性がある。

