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進化遺伝学:非適応的な可塑性は自然界で遺伝子発現の急速な適応進化を促進する

Nature 525, 7569 doi: 10.1038/nature15256

表現型可塑性は、単一の遺伝子型が環境の変動に応じて異なる表現型を生じる能力である。多くの形質は可塑的であるが、可塑性がどの程度適応的または非適応的であるのかは、環境によって誘導される表現型が局所最適により近くなるか、それともより離れるかに依存する。既存の理論では、可塑性が適応進化を抑制するのか、それとも促進するのかに関して、相反する予測がなされている。議論がいまだに続いているのは、当初の可塑性とその後の適応進化との関係性を自然個体群で検証した実証研究がほとんどないためである。今回我々は、遺伝子発現の可塑性の方向が概して、適応進化の方向と逆であることを示す。我々は、捕食者であるシクリッドとの共存に適応したトリニダード島産のグッピー(Poecilia reticulata)を、シクリッドが生息しない小川に実験的に移し、3~4世代後に脳の遺伝子発現パターンの進化的分岐を調べた。その結果、導入した同型個体群の内部に、発現の並行的な変化を進化させた転写産物が135種類見つかった。こうした変化の方向は、シクリッドが生息しない場所にもともといるグッピー個体群に見られるものと同じであり、このことから、急速な適応進化が起こったことが示唆された。導入元の個体群を捕食者のいない状態で飼育すると、135種類の転写産物のうち89%は、非適応的な可塑的発現変化を示し、それらの変化はこの個体群が進化させた変化と逆向きであることが分かった。対照的に、適応的な可塑性を示した残りの転写産物には、個体群分岐の抑制が認められた。さらに、元の個体群で最も可塑性の高い転写産物は、導入個体群では低い可塑性を進化させており、非適応的な可塑性に強い選択がかかっていることが示唆された。これらの結果は、適応的な可塑性が進化を抑制する一方で、非適応的な可塑性が方向性選択を強めることによって進化を促進するという予測モデルの裏付けとなる。非適応的な可塑性が進化で果たす役割はこれまであまり注目されてこなかったが、今回の結果は、非適応的な可塑性が新しい環境に対する進化的応答を予測する上で重要な機構となる可能性を示唆している。

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