Letter

がん:PPARγアゴニストによる慢性骨髄性白血病幹細胞プールの崩壊

Nature 525, 7569 doi: 10.1038/nature15248

がんは少数の幹細胞によって維持されるのか、あるいは表現型がほぼ同じ増殖細胞から構成されるのかはがん生物学の中心的問題の1つである。幹細胞仮説では、治療後の再発はがん幹細胞の根絶の失敗によって起こる可能性があるとされる。慢性骨髄性白血病(CML)はこの仮説の典型である。CMLは、融合がんタンパク質BCR–ABLの脱調節されたチロシンキナーゼ活性によって生じる骨髄増殖性疾患である。慢性期には、幹細胞レベルでの唯一の遺伝的異常(染色体転座Ph+:t(9;22)(q34;q11))が、骨髄細胞の分化能を喪失させることなく、その増殖を増大させる。治療しなければ、ほとんどの患者が急性転化期に進行し、さらなる発がん性変異により増殖性未成熟細胞からなる致死的な急性白血病に進展する。BCR–ABLのキナーゼ活性を標的とするイマチニブメシル酸塩などのチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)は、患者の生存を著しく改善している。しかし、BCR–ABL転写産物が血液細胞で検出できなくなる時点と定義される分子遺伝学的完全寛解(CMR)の段階に到達する患者は10%未満である。CMRに到達できないのはTKIがCMLの静止状態の白血病幹細胞(LSC)を根絶できないためである。今回我々は、残存するCML LSCプールが、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)のアゴニストである抗糖尿病薬のグリタゾン系薬剤により徐々に除去され得ることを示す。グリタゾン系薬剤によるPPARγの活性化は、STAT5やその下流の標的HIF2αおよびCITED2の発現を低下させる。これらはCML LSCの静止状態や幹細胞性を保護する重要な因子である。イマチニブの継続投与にもかかわらず慢性の残存疾患がある3人のCML患者に一時的にピオグリタゾンを投与すると、全ての患者でピオグリタゾン中止後もCMRが持続し、最長期間は4.7年であった。このことから、臨床的に意義のあるがん根絶は、がん幹細胞プールを崩壊させる併用療法により一般的に達成できる目標になる可能性がある。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度